「大丈夫ですか?」
女の声が近くで聞こえる。何とか立ち上がった亮は、ふらついてしまい、声の主に支えられるようにして側にあったベンチまで歩いていった。
「横になった方がいいですよ」
促されるままにベンチに横になる。頭がくらくらし、視界が回っていた。完全な貧血だ。
女は「ちょっと待ってて下さい」と言って、どこかへ駆けていったが、亮はそれを目で追うこともできず、瞼を閉じて手で目を覆った。吐き気を催し、深呼吸を繰り返す。
やがて戻ってきた女がベンチの前にしゃがみ込み、水の入ったペットボトルを亮の顔の前に差し出した。
「これ、飲んで下さい」
亮は薄目を開けてそちらの方を見ると、上体を起こしてペットボトルを受け取った。喉がとても渇いていた。
「すみません…」
ゴクゴクと水を飲んだ亮は、それを地面に置いて再び横になった。女はバックからハンカチを取り出してペットボトルの水をかけると、それを亮の額の上に乗せた。
「タクシー呼びますから、病院に行きましょう」