幼稚園の頃、仲の良い男のコと女のコがいた。
何事にも意味を考えない、素直さがあった。
お泊り会と称した会は二人だけで行われた。
共に五才の二人に、仲良く寝るんだよ、親は約束をした。
布団はずっと大きくて二人はすっぽり入り込んで包まれた。
夜は風が冷たくて一つの掛け布団は、分け合うように共有しあうように、暖かかった。
いたずらに肩と肘の間をすっと流れる人差し指。不意の出来事に振り向いて目を合わせた。
瞬きをパチパチする仕草に意図はなかった。
人差し指と人差し指を合わせて二人で笑った。
静暗の中の二人は二人だけが見えていた。
寝る時は静かにしなきゃいけない、先生との約束を守って二人は静かにしていた。
次の指、次の指と指を合わせていくと手のひらがくっついた。
目を閉じたけれど不安感はなく、安心感は二人を取り囲んで、途絶えぬように手のひらが伝えていた。
朝になって明るいトコロでちゃんと顔を見合わせた。
掛け布団が暑かったせいか、二人は赤くなっていた。
言葉が無くても伝わる思い。
言葉が有っても伝わらない思い。
透き通った無垢な感情同士のお泊り会は、大人には叶わない。
…大切なコトを忘れてしまった。