3 ゆきにい
私の発言に,
多哀は目を丸くした。
『‥馬鹿だろ。』
『ん何っ!?』
私が怒ろうとした時,
『女の子を馬鹿呼ばわりとは少々感じが悪いですよ,アオイ。』
背後で別の声がした。
それまで私は後ろの人の存在に気付かなかったから,心臓が止まるかと思う位びっくりした。
『‥!ゆきにい!?』
多哀が"ゆきにい"と呼んだその人は,儚げに私に微笑みかけた。
その顔立ちは,
色白で,女みたいに綺麗だった。
悔しいけど女の私でも負けだ‥。
儚げと言うのは,
その人の雰囲気から。
『アオイが失礼な事を致しました。』
この人は多哀とは違ってよく笑う
『ゆきにい,駄目だよ外に出ちゃ!』
多哀は"ゆきにい"に駆け寄った。
『アオイ,
女の子には優しくしなければいけないよ。』
『‥ごめん。』
ゆきにいは多哀の頭を撫でると,私に向き直った。
『アオイを,許してやって下さい。』
『も,勿論です!!』
私は,
多哀をも素直に謝らせるこの人にかしこまった。
『そうだ,うちでお茶でも飲んで行って下さいよ。』
『ゆきにい‥!!』
多哀が少し怒ったようにゆきにいの腕を掴んだ。
ゆきにいは少しも表情を崩さず,
『良いですね,アオイ。』
余裕の笑顔まで見せた。
この人は本当に,何者なのだろう。
〇〇続く〇〇