俺の春はいつ来るの?16

れうぃ  2010-05-03投稿
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先輩五人が殴り掛かって来ているのに俺は案外冷静だった。なぜなら、状況は違えど昔同じような事があったからだ。
確かあれは中学時代、俺がまだ輝かしいテニス部のエースだった頃の事かな。

全国大会の決勝戦前、俺は控室で緊張しつつラケットの点検などをしていた。
俺は小さな頃からテニスをしており、今までの努力のかいあって、やっとここまで辿り着いた。
だか、聞くところによると相手選手も小さな頃からテニスをしていたらしい。
ならば条件は共に同じ。正々堂々戦って全力を尽くすだけだ。
そう思いながら気持ちを落ち着かせていると控室の戸が叩かれた。
「決勝戦の相手の親ですが、試合前に寺田君にご挨拶を」
「あ、はい。どうもご親切に」
俺は慌てて戸を開け、相手選手の親と対面した。

――それが悪夢の始まりだった。

「いや〜、君は本当に強いそうだね」
「いえ、そちらの方こそここまで勝ち上がって来たんですから」
「本当にそう思いますか〜?」
・・・・・・はい?
「君は家の子供の試合を見たことがありますか〜?」
「い、いえ、ありません」
どういう事だ?イマイチ状況が良く分からない。
「ではこちらを」
そう言って親は俺に携帯のムービーを見せてきた。
そこに映っていたのは素人よりも数倍下手くそなデブがテニスらしきものをしているものだった。
「これは今日の君の対戦相手が昨日練習していた姿だ」
「い、いや、有り得ないでしょ。こんなやつが決勝戦まで勝ち上がって来るなんて!」
「はい、そうですね。正攻法では」
まさか!
「まさか今まで勝って来れたのは対戦相手を全員懐柔して!?」
「はい、ですがたまに実力行使までしてしまったこともありましたがね〜」
そして次は俺ということか。
「まあそういう事ですので、これを君にあげます」
親は手に持っていたトランクを俺に渡した。
中を確認してみると、そこには札束がびっしり詰まっていた。
「これでどうか家の子供を勝たせてくれませんか〜?」
「・・・・・・嫌です!」
「そうですか〜、では仕方ありませんね。実力行使をさせていただきます」

その後、ガードマンのような人達に囲まれ、殴られたり蹴られたりした。
必死の抵抗も意味なく、結局俺は試合に出られず病院へ連れていかれた。

・・・・・・何だか変な事思い出しちゃったな。そのせいで、何だか無性に暴れたくなってきた。



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