路肩に設置された木製ベンチに座っている少年二人の沈黙にさして、近くにある“結婚式の家”の尖塔の仕掛け時計が鳴った。
アヒムはこのメロディにひどく嫌悪感を抱く癖があり、メロディに合わせてひょこひょこと動くからくり人形たちの列を睨み、
「くそっ。頼む、とまってくれ…」
そう呟いたが、音が終焉を迎えることはなく、このまま永遠に鳴り続けるような気さえアヒムは起こしてしまうのであった。
しかしそもそも、アヒム少年はこの嫌悪感が一体何に起因しているのかさえはっきりとは掴めずにいた。
次第に音が鳴り止むと、アヒムは立ち上がり、虚ろな目をして、千鳥足のままで歩き始めると、西の空のオレンジに彼は飲み込まれていった。
もう一人の少年オットーは彼のシルエットをただ見つめながら、しばらくベンチに座り込んでいた。
「またか、アヒム…」