思い出すのは、桜の木の下。
4月のおわりに咲いてるはずもなく、それでも見たいと探しまわった。
結局葉桜の木の下でビールで乾杯。
プルトツプも開けられない、
箸も割れない。
いままでどうやってきたのと聞いたら
「はじめから割れてるお箸つかうから」
じゃあ缶は?
「スプーンとかの後ろ使うかな」
「でなかったら、開けない」
って、
どんな生活してきてるんだよ。
夜が明ける少し前、スプリングコートを着て、小刻みに震えてたきみがまるでチワワみたいで。
抱きしめるべきか迷ってた僕に
「手をかして」
そう言ったきみは僕の手を半ば奪うようにして組み手した。
それも両手。
ぷるぷる震えながら必死にこらえてるきみを見た。
あのとき、恋におちた。