｢基礎がこれだけ出来ていれば十分です。後は細かい動作や体の使い方を覚えていけばいいでしょう｣
エナンはそうアドバイスをしながら剣を構えて、
｢では早速、始めましょうか｣
と、言って、にっこりと微笑んだ。
｢はいっ！｣
ザックは大きく頷いて、同じく剣を構えた。
｢…しかし、あの剣、奇妙な形してるよな｣
ダリルはザックが腰に提げている剣を見つめながら、ポツリと呟いた。
｢奇妙な形？｣
ミーナは首を傾げて、その剣を凝視した。
｢どこも変な感じはしないけど…｣
｢よく見てみろよ。何かを埋め込むような形をしたでかい剣首がある。あんな剣は他に無いぜ｣
｢あ…本当だ｣
彼女は納得したように頷いた。
｢一体何者なんだろうな、あいつが出会った女って…｣
｢賞金稼ぎでしょう？ザックが言ってたじゃん｣
｢それはわかってる。…まあ、それ以上でもそれ以下でもねえんだろうけどな｣
ダリルは頭を掻いて小さく息を吐いたが、目だけはしっかりとその剣を見つめていた。
メディナは羊皮紙に書かれた地名に羽ペンでバツ印を付けた。
｢ここも無し、か…｣
―足跡を辿るのにこれだけ苦労させられるとはね…。
彼女は苦笑しながら、髪を掻き上げた。
宿の内外は既に闇に覆われ、部屋の中ではランプの炎がゆっくりと揺れていた。
―正に、完璧な逃走だわ。女の子の似顔絵が作られた以外は。
彼女は小さく息を吐いて、コーヒーカップに口をつけた。
コーヒーは既に冷め切っている。
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