メディナは不味そうに顔をしかめながら、
「もうそんなに時間が経っていたのね…」
と、呟いた。
―さて…後はこの三つね…。
彼女は羊皮紙に書かれた残りの村を指差した。
そこには「エルム村」という文字がはっきりと書かれていた。
剣と剣の擦れる音が林に響き渡った。
「たあっ!」
「よっ、はっ!」
ザックはエナンを相手にして上段からの打ち込みと横からの薙ぎ払いの動作を繰り返し練習していた。
「最後です!」
「だああっ!」
エナンの合図と共に、ザックは上段から激しく打ち込んだ。
一際大きな音が、林の中を駆け巡る。
「お疲れ様でした」
エナンはにっこりと微笑んで、木剣を下ろした。
「はあ…」
ザックは疲れたような顔で、同じく木剣を下ろした。
そして二人は同時に頭下げると、
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
と、礼をした。
「お疲れ様、二人共」
ミーナはタオルをザックとエナンに手渡した。
「ありがとう」
「どうもすいません」
二人は礼を言って、大きく息を吐きながら汗を拭った。
「一週間で一連の動作がスムーズになってきました。やはり基礎をみっちりとやってきたお陰でしょう」
「ありがとうございます。まあ、でも、僕はただ言われた事をやってきただけなんですけどね」
「そうですか」
エナンは小さく頷きながら、顎に手を当てた。
―しかし…時々見え隠れする独特な足の運びは一体何なのだろうか?
「ザックさんはその出会った女性から素振り以外で何か教えてもらった事はありますか?」
「素振り以外ですか?…いえ、特には…」
ザックは不思議そうな表情で、首を横に振った。
「なら、彼女の剣技を見た事は?」