田川は
前の試合の疲れからか
技のキレは
本来のものではないが
手足が長く
懐も深いため
攻めあぐねた
不用意に飛び込めず
時間は経過していく
僕は攻め続け
何度も場外まで
後退させるが
攻め落とせない
嫌な雰囲気の中で
僕は少し
攻め疲れたフリをして
田川を誘った
田川は一息つき
この試合はじめて
攻めてきた
田川の蹴りを
前に出て受け
骨折してた右手で
渾身のストレートを
田川の顔面に叩き込んだ
田川は腰から砕け
崩れ落ちた
大歓声が
試合場を包んだ
・・・・・・・・・・
試合後の礼が終わり
試合場を出た僕に
駆け寄るチームメートを制した
全体の整列(礼)が
終るまでは厳粛にしろ!
かつての名門
龍谷大学日本拳法部
復活の瞬間だった…
最近途切れたらしいが
僕の2期下の代から
我が母校は関西大会
15年連続
準決勝以上進出
という金字塔を建てた
たかが
学生スポーツ
されど
学生スポーツ
あの日以来
未だに右手は
若干不自由だが
日常生活には支障はない
むしろ
右手の不自由を
感じると
あの日のように
闘志が吹き出る!
絶対勝つぞ!
あの時は試合だったが
今は自分の正道を
貫くことに気合を入れる
絶対勝つぞ!
かけがえのないひとコマ
昭和63年度
関西学生拳法選手権大会
ー閉幕ー
あとがきに続く