『ママは魔法使いだなんて言って、じゅんすいな子供の心を持てあそぶなんてさ〜』
「うっ…」
じゅんすい?持てあそぶ?
小学1年生の国語の教科書に、そんな言葉が出てくるのか?
『まあ、昔のことだからもういいけどさあ、これからは気をつけてよね』
「…すみません、気をつけます」
つい1年程前までは、恋人の嘘に揺れ動く純情な少女だったのに。
今じゃまるで【お父さんの女遊びにはよく泣かされたもんだわ〜】なんて昔話を笑いとばす肝っ玉母さんじゃないの!
…子供の成長は早い。
嘘つきと責められなかっただけ良かったものの、何故か複雑な心境だったのを覚えている。
それ以来子供は親の嘘を真にうけたり見破ったりを繰り返しながら成長を続けてきた。
で、はじめの布団の中に戻る。
『…ねえ、死神ってさあ、怖いんでしょ?』
「死神?…まあ、そうなんだろうねえ」
また学校の図書館で新しいネタを仕入れてきたらしい。今度は死神…?あまり詳しくはないので正直困ってしまった。
『鎌で人間を殺しちゃうんでしょ?』
どうも本で知った死神の存在が、彼女の中では恐ろしくてしかたないらしい。
おそらく、(大丈夫、怖くないよ)みたいな返事をもらいたいんだろう。
「死神ってのはさあ、別に鎌で殺すんじゃなくて、死が近づいた人のところに来て、連れていくだけなんじゃないの?」
『ほんと?じゃあ鎌で殺すんじゃないんだね?』
…やばい。これはまた魔法使いの二の舞?
と思いながら、これから膨らんでいくであろう新しい死神のイメージにワクワクしてしまい、口が勝手に…。
「死神さんていうのはさ、お仕事でやってるだけなんだよ。人間はみんないつか死ぬでしょ?だから、そういう人をあの世へ連れていくお仕事をして、お給料もらってるんじゃないかな」
『うんうん!』
「だから、鎌持ってとかさ、そんな怖い人じゃないと思うよ。例えば…そうだな、営業マンみたいな」
『えいぎょうまん?』