「なるほど、それで?」
オットーが剥いた洋梨を六等分し、フォークで刺してアヒムの口元に近付けたが、アヒムは首を振ったので、自分の口元に放り込んだ。
「それで、俺はその男に何が目的なのか尋ねたら、いきなり銃を突き付けてきやがった。」
「そりゃあ、おまえ…びっくりだな。」
オットーは笑った。
「お前、心当たりあるか?」
「あるっちゃ、ある。」
オットーはまた、一口洋梨を口元に放り込んだ。
「そうか…ならいい」
「聞かないのか?訳を」
「聞いたら言うか?」
「言わない。」
オットーがまた笑った。
「なあ、オットー。俺が養父母の元から逃げだしたのは二年前だ。あいつら今頃、俺の捜索願いすら出してないだろうな。さんざん奉仕した挙げ句、虐待まで受けるくらいだ。」
「…」
「オットー、お前は今までどうやって生きてきたんだ?」
「俺は、ミュンヘンで育った。親父と二人きりで。ただ親父は…」
「親父は?」
アヒムはオットーを促した。
「死んだ。自殺したんだ。いやあれは本当は自殺じゃ…」
「自殺、じゃないのか?」
アヒムは自殺の部分だけアクセントを弱くして言った。
「…ああ」