ロミオ起きて!ロバ何処よ。知ってんのアンタ、ロバの行き先を。隣で自殺でもされたら、大変だわ。ジュリエット!朝からエッチかい。立つ鳥跡を濁さず、だろ。馬鹿ね!アンタ、ロバ何処よ。ロバは今頃、ベットの中で休んでいる。スヤスヤと寝息を立てて。馬鹿ね!アンタ。ロバ捜しなさいよ。ロバが無かったら悲しいのは、私一人じゃないのよ。
いいじゃないかジュリエット!ロバくらい。ほっとけよ。そのうち帰ってくるさ。ロバはな、人間には馴れない。人間もロバに馴れないのさ。ロバの行き先を知る者も、いずれロバを見失う。ロバは放浪が似合っているのだ。可哀想だが、ロバを捜すのはよそう。ロバは今頃、天国で草をはんでいる。ムシャムシャと音を立てて、如何にも、それらしく歯を突き出して。
それが愛らしいのも、天国へ行ったからだ。もしかしたら地獄で、マスターの口先で珈琲を飲んでいるよ。マスター気が合うねってってさ。しかし、どうだろう、ジュリエット!ロバは厄介に思っていないだろうか。日頃から草ばかり食べていた。 しかし、そう思っていなかったとして、何がロバの身の上に起こったのだ。ロバが羽が生えて飛ぶか。
ロバが飛んだのは、ラクダになってからだ。ラクダになって空を飛び、ロバはロバの夢を見る。飛ぶ所か、今頃ベッドの中だ。愛が難かったのも、ラクダが空を飛んで、人間のものとなってからだ。空を飛ぶラクダの心境がロバにいる。ジュリエット!ああ、ロミオ!二人は朝から抱き合った。