メディナは残念そうな顔で小さく頭を下げると、その家から離れていった。
―後は様子を見るだけね。
彼女はニヤリと笑って、髪を掻き上げた。
｢誰だった？｣
ブラウンは少し心配そうな表情でエミリーに尋ねた。
｢女の人だったわ。妹さんが家を出て行ったまま行方知れずになって、捜しているそうよ｣
｢そうか…なら心配する事は無いな｣
｢ええ。人を捜していると言われた時は一瞬ドキッとしてしまったけれどね。兵隊さんでなくて良かったわ｣
エミリーは安堵の表情を浮かべながら、途中だった料理の盛り付けを再開した。
｢どんな人だったの？｣
リリアは盛り付けを手伝いながら、エミリーに尋ねた。
｢そうねえ…赤毛で美人さんだったわよ。ただ、少し暗い雰囲気もあったわね。まあ、妹さんが失踪したから仕方ない事でしょうけど｣
｢赤毛かあ…｣
ザックは小さく首を捻った。
｢何か思い当たる事でもあるの？｣
｢いや…剣を教えてくれた人も赤毛だったから…｣
｢思い出のあの人ね｣
エミリーは悪戯っぽく笑って、ザックを見た。
｢剣は帯びてた？｣
リリアは少し不安そうな顔になって、エミリーに尋ねた。
｢帯びていなかったわよ｣
エミリーは先ほど見た女性を思い浮かべて、首を横に振った。
それを聞いたリリアは安堵して、
｢それなら安心ね｣
と、言いながら小さく息を吐いた。
―スレイは優秀なのに、コッペルときたら…メドゥナ家の恥だな。
｢ちっ！｣
コッペルは酒を飲みながら、大きく舌打ちをした。
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