そうか、営業マンはまだわかんないか。
「え〜とねぇ、そうだなあ…あ!ほら、時々来る薬屋さんみたいな人だよ」
『あ〜!あの風船くれる人?ちゃらちゃらしたおじさん?』
ちゃ…。
営業マンて言葉は知らないのに、チャラチャラって言葉は知ってるのか。
子供の頭の中で、3ヶ月に一度精算に来る置き薬の、確かにベラベラよく喋るおじさんと営業マンのイメージが、今まさに結びつこうとしていた。
「…いやいや、別にチャラチャラとかじゃなくてね、スーツ来て、カバン持って、とっても礼儀正しい人かな?」
『ふ〜ん…』
今の説明で分かったのかしら?
そこで、名刺を出すそぶりをしながら【死神】を演じてみることにした。
「あの〜○○○(子供の本名)様でいらっしゃいますか?あ、わたくし申し遅れました、<死神太郎>と申します〜お世話になります〜」
名刺がよく分からなかったらしく一瞬キョトンとしていたが、名前が気に入ったのか、話し方がツボに入ったのか、子供はケタケタ笑い出した。
『死神さんですかあ?なんのご用事〜?』
ノッてる。
「…い、いや、実はですねえ、この度○○○様にあの世へいらっしゃる番がまいりまして、それで、わたくしが迎えに参った次第でございます〜ハイ」
『え〜!鎌で殺しちゃうんでしょ〜?』
「そんな滅相もない!それは偏見でございますよ。わたくしはただただ、この仕事のために日夜頑張っているだけでございます。鎌なんて使いません」
『ならいいよ〜!あの世行っても』
「えっ!いいんですか!?…はあ…それでですねえ、つきましては打ち合わせのお時間をいただきたいのですが〜」
『ウチアワセ?』
「…え〜ウチアワセというのはですねえ、まあつまりちゃんとあの世へ行けるように準備をするということでございます」
『どんなどんな?』
「えっ!いやまあ、たとえば、あの世へ行く日にちとか〜時間とか〜」
『死に方とか!?』
「えっ!死に方ですか!?」
『だって鎌でザクッじゃないんでしょ〜?ねえねえ○○○はどんな死に方なの〜?病気とか?車にひかれちゃうとか?』
子供コワイ。