私の頭の中の友達

刹那  2010-05-15投稿
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ある日の朝、突然私の頭の中に声が響いた

『もしもし、聞こえるかい?』

「え?」

あまりに突然だったので、私は食べかけのトーストを床に落としてしまった

『良かった、やっと通じたみたいだね。ビックリさせてしまってゴメンよ』

また声が聞こえた。男の人のようだ

「あの…これは一体…?」

恐る恐るたずねてみた

『これは一体どういう事かって?』

彼は特に気にした様子もなく、淡々と語った

『さぁ、僕には分かりかねるね。何しろ僕がこんなことを出来るようになったのも、たった一週間前の話だからね』

「……」

『でも、一つだけ分かることがある』

「何ですか?」

『君は最近、“ケータイが欲しい”と思っていたね?』

「………」

図星だった

私の通っている中学校でも、ケータイを持っている生徒は珍しくない。というか、ケータイを持っていない生徒の方が珍しいのだ。
中学校ではケータイの持ち込みが禁止されてはいるが、特にチェック等はないため持ち込むのは簡単だった。
最初はそんなことは気にならなかったが、休み時間や、授業中にケータイを使っているのを見ているうちに“私もケータイが欲しい”と思うようになった。そしてその思いは、日を増すごとに強くなっていった

『君の強烈なまでのケータイへの執着心が、これを可能にしたと、僕は思ってる』

「なんでそんなこと…」
『僕も同じだからだよ』
「貴方も?」

『その呼び方はやめよう、聞いた所、君は僕と同じ中学生みたいだから…そうだな…僕のことは“ユウヤ”と呼んでくれ』
「ユウヤ…」

『そうだよ、君のことはなんて呼べば良いかな?』

どうしよう…なんて呼んでもらおう…と考えていると、いつのまにかこの会話に慣れてきている事に気付いた。
それどころか、ユウヤに対して親しみすら覚えている

「じゃあ私のことは…“ミズキ”って呼んで」

『ミズキか…良い名前だ、君の本名?』

「そうだよ、どうせ呼んでもらうなら本名の方が良いと思ったから」

『なるほど』

ユウヤは満足そうに呟いた

『ゴメン、ちょっと用事ができたからひとまずこれで失礼するよ。そうだな…5時間後にまた話そうか』

「分かった、どうせ暇だからいつでも良いよ」

『ありがとう』と言ってユウヤの声は消えた。気付いたら3時間も経っていた

〜続く〜

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