酒場の中では荒くれ者たちが酒を飲みながら下品な笑い声を上げていた。
―メドゥナ家がまだ健在だったなら、てめえら全員牢屋にぶち込んでいるぜ。
コッペルは心の中で荒くれ者たちを侮蔑の目で見つめていた。
―マーチンの野郎は俺を良く思っていないみたいだが、それは間違いだ。俺は兄貴より優秀なんだよ。
ニヤリと笑い、剣の柄を撫でる。
―剣の腕は兄貴より上。しかも…だ。
彼は懐に手を入れて、中にある固い感触を確かめた。
―兄貴が一つしか持っていない物を俺は二つも持っているんだからな。
彼は歪んだ笑みを浮かべながら、酒を一気に飲み干した。
「はっ、はっ!」
「やっ、やっ!」
エナンの剣による攻撃をザックは必死に受け止めていた。
「はあっ!」
「くっ!はあっ!」
ザックは上段からの強烈な一撃を何とか凌いで、大きく息を吐いた。
「ここまでにしましょう」
エナンは袖で汗を拭うと、剣を降ろした。
「まだまだ体勢が崩されそうになりますね」
「本格的に練習して日が浅いですから。仕方ないですよ」
「そうですね」
ザックは小さく頷いて、もう一度大きく息を吐いた。
「お疲れ様。ザック、エナン」
傍でザックとエナンの練習を見ていたリリアが二人にタオルを手渡した。
「ありがとう、リリア」
エナンとザックはそのタオルで汗を拭った。
「エナン、あれから何か情報は来てる?」
「ダミスの事ですか?」
「いいえ、国の事よ」
リリアは鋭く目を光らせながら、尋ねた。
「…小屋に行きましょう」
エナンは真剣な表情になって、小屋に行くように促した。
その様子を林の奥からメディナが見つめていた。
「ビンゴね」
彼女は小さく微笑むと、足音を立てずにその場を後にした。