志穂が振り返ると、彼女の腕を掴んだまま見下ろす伸昭と、その後ろに琢磨がいた。
志「の…ぶ…」
翼「あ゙ぁー軽男!…と“いとこ”。」
琢「何やねん、そのついでみたいな言い方。」
伸「その軽男ってやめてくれへん?」
翼「なんや、いつものカマ男は一緒ちゃうんか?」
伸「たまには琢磨と一緒におってもええやろ?…まったく…秋ちゃんに向かって何してんねん、お嬢。」
志「離してよ!」
伸「…」
伸昭は左手で掴んだ志穂の手で、自分の右腕を叩いた。
志「な…?!」
伸「はい、これが“秋ちゃんの分”ってことで仕返しはおしまい。さあ、帰ろ。」
志「私は、まだっ…!」
琢「もういい加減にしろ!もうええやろ?!俺らのバンドは終わってるんや!」
翼「え…?」
琢「あの大会で俺らのバンドは解散したんや。もう過去にすがんな」
志「…」
伸「ほら、帰ろう?志穂」
伸昭が志穂の手をひく
翼「あ…お前らも頑張ってたと思う!…ただ…」
琢「確かに俺らの努力は完璧やった。でも…理想通りの結果にならないってことは、何かが足りなかったってことや。それは頑張ったとは言われへん。結果がでて始めて“努力”と言えるんや」