「私たち以外の誰かがクリスタルを奪った?」
「はい」
エナンは小さく頷いた。
「相手が誰かはまだわかっていないようです。ただ、別の保養所が襲撃されて宝物が盗まれたという情報は確かです」
「俺たち以外でもクリスタルの存在と在処を知った奴がいるという事か」
ダリルは眉間にしわを寄せて、唸った。
「この出来事で私たちは作戦変更を余儀なくされるかもしれません」
「ど、どうして?」
「相手の警備態勢がこれを機にもっと強くなる可能性があるからです。そうなると数の少ない私たちでは手の出しようがありません」
「何て事…」
リリアは唇を噛み締めて、頭を抱えた。
「そこで、これからダミスと並行して襲撃した組織を探ってみようと思います」
「どうして?」
「彼等も我々と同じような動機で行動している可能性があるからです」
「そうか、味方を増やす訳ね!」
ミーナは手を叩いて大きく頷いた。
その時、小屋の扉が音も無く開いた。
「え?」
五人は扉から太陽の光が射し込むのを驚きの表情で見つめた。
そこから入ってきたメディナは静かに扉を閉めた。
手には鞘に収まった剣が握られている。
「くそっ!」
ダリルは予期せぬ事態にしばし呆然となって彼女を見ていたが、剣の存在に気がついて慌てて自分の剣の柄に手を掛けた。
「よしなさい」
メディナは静かにそう言って目にも止まらぬ速さで剣を抜くと、ダリルの首筋に刃を当てた。
「ぐ…!」
「だ、ダリル!」
ミーナは青くなって声を震わせた。
エナンは苦い顔でメディナを睨むと、
「何をしに来たんですか?」
と、尋ねた。