いつ頃からだろう。私は全てに疲れていた。
きっと誠也の私に対する冷たい態度が私をおいつめていた。その日も誠也の言葉は刺がいっぱいだった。
会うなり真剣な顔で「帰る」
と言った。
私は棄てられる寸前だったのだ。
でも
でも
まだ誠也が私の事をほんの少しでも、嫌いではないという、確証を探していた。「幸の顔みるだけで腹たつわ、飽きたから別れて下さい」
誠也は私を見ずに、すれ違ったミニスカートの若い女を見ながらボソッと呟いた。
私は昨日会ったばかりの若い、私に惚れている男の顔を思いだそうと必死になったが、どうしても思いだせなかった。名前も知らない男の笑顔が誠也ならよかったのに…。
「別れないよ」
私はバックに手を入れてお守りがわりに持ち歩いてる、あるものを握りしめた。おもいっきり笑ってみせた。