幸はハンネしか知らない男の寝顔を見ながら溜息をついた。いつも誰かに愛されたくて
大切にされたくて
名前も知らない男の前でうんと甘えてみせる。
男も幸と寝る前までは大切に扱ってくれた。
優しかった。
でも
男がおきると、安物のドラマは終わる。いつも、
いつも
愛に飢えている。
優さが欲しい
嘘の優しさでも一瞬幸は幸せだった
どうしたら渇きが癒えるんだろう…。
その答はいつも解っていた。
答は一つなのに…
知っていながら自分を騙してつかの間の錯覚に陥いるためにまた、メールを打つ。
「私はお洒落と買い物が好きな女の子です。お酒を一緒に飲んでくれる素敵な彼氏を募集中。」
携帯に積もっていく知らない男達からの欲望だけのメールだけが今の幸を幸せにしてくれた。
深い寝息をたてている、今日会ったばかりの男の背中に囁いてみる。
「誠也」
男がさちの肩を抱いた。