リビングに案内された杉本は、早速優に先ほどの京都と雪野の接触を話した。
話を聞くと優は驚く顔をするかと思いきや呆れた感じで話を聞いていた。「なぜ呆れた顔をする?」と、聞いてみると
「だって、そんな事をすれば自分たちの状況をさらに悪化させるだけでしょ?」
と、鼻で笑いながら答えた。確かにそうだが、あの状況ではあれ以外彼らの逃げ道はなかっただろう。と、内心杉本は思っていた。
むしろあの状況でとっさに二重の策を用意してきた雪野と京都の判断能力に恐れ入る。
そう思っていると優から杉本に話しかけてきた。
「んで杉本さんは、俺に何の用ですか?」
優がそう聞いてきてくれたので杉本は遠慮なく優に質問をし始めた。
「では、色々と聞きたいのだが、まずは京都君についてだ。彼は一撃で鍛えられた警官を不意打ちとはいえ気絶をさせられた。これは普通の高校生には無理だ。彼は何か格闘技をやっていたのかい?」
杉本は自分が疑問に思ってきた一つを聞いてきた。
「あぁそれは、俺のせいですよ」
意外な答えだった。
「君のせい?」
「俺の稽古に昔から付き合えわせたんですよ、京都には」
優は笑いながら答えた。
「稽古?」
「さっき来た警察の怖いおっさんにも答えたんですけど、俺の将来の夢は警察に何が何でもなってやることなんですよ。そのためには何でもやったんです」
そう答える優の目にはギラギラと燃える何かがあった。情熱……とはだいぶ違っている。何か……そう復讐?そっち系の悪意に似た何かを感じ取った。それに何か杉本に挑発するみたいな口調であった。
「何が何でもなってやる……ねぇ」
杉本も挑発をスルーすることなく不敵な笑みで優に返した。
その杉本の返し方によって二人の間に何か亀裂が生じた。
長い沈黙が流れ、その均衡を破ったのは杉本だった。
「稽古ってなんだい?柔道かな?だが、柔道の当て見ではあれだけのひじ打ちはできないだろう?」
「流石エリートさんは違うね。確かに柔道もやっていたが、僕が柔道を始めたのは六年前、それ以前からやっていたのは空手です。それにつき合わせていたんですよ。だから京都は空手と柔道ができます。警察官といえど京都には勝てませんよ。」
優はまた挑発染みた目で杉本を見た。