僕と同じ髪の色

快雅  2006-08-26投稿
閲覧数[312] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「ちょっとっ急いでよ!あたし遅刻なんて嫌だからねっ!」
 初めて純弥が麗久の家に来た時からもう四ヶ月が過ぎようとしていた今日この頃、二人そろって寝過ごした。
「これでも急いでるんだけど・・・っていうか、もう遅いよ。」
 玄関にある時計を指さして純弥が言った。
 時計はもう八時十分を指していた。
「やーー!最悪っ・・・あー・・・もー・・・」
「・・・じゃあさ・・・さぼろうよ。」
「え?」
 麗久はその言葉に顔を上げる。
「・・・僕が五月蝿いところ嫌いなのは知ってるでしょう?」
 そう、何ヶ月か前に純弥はそう言った。本当の鳥は好きだけれど、自分を取り巻いて、ピーチクパーチクひっきりなしに鳴く鳥は嫌いだと。
「だから、さぼろうって、提案してるんだけど・・・」
「・・・はー、怒られるのヤだし、学校休もうか・・・」
 麗久がそう言うと純弥は伸び伸びと背伸びをした。
 何時もそうだがこうやって家にいるときは覇気など微塵も感じないが、本人曰く、五月蝿いところへ行くと痛いほどの覇気を感じることがしばしばある。それでも近づいてくる女子らは鈍感なのか、それとも物凄い鋼の肉体の持ち主かのどちらかになる。(まぁ、きっと鈍感なのだろうけど・・・)
 しかし、純弥が喧嘩していいるのは見たことがなかった。(そういうきっかけがないからかもしれないないが)少しくらい何かされれもほんの少し睨むくらいで喧嘩まで発展することはなかった。
「ねぇ、あんたって本当に喧嘩強いの?」
「んー・・・?」
 純弥は玄関からかすかに見える空を見た。大好きな鳥が空を舞っている。純弥はそれを確認するかのように見てから、麗久の方に向き直り、こう言った。
「喧嘩は強いよ。君が知ってるとおりにね。」
(?喧嘩は・・・って・・・)
「僕は父さんの命令に忠実なお人形さんだから。」
「な、初めて聞いたよ、それ・・・」
 純弥の父親は純弥だけを日本に置いて自分はまだイタリアにいるらしい。純弥の父親は『表の世界』ではあまり知られていないが、『裏の世界』ではとんでもなく顔が広いらしい。最初はあまり信じなかったが、本当のことらしく、前に一度護身用だとか言って、変形型のリボルバーが送られてきたことがありそれ以来嘘だと思えなくなってきた。
「だって、僕に干渉しすぎると、ろくなことないよ。」
 そう言った純弥の瞳は悲しみの色をおびていた。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 快雅 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ