《注!》2で主人公が小学3年生となっていますが、1年生です!ごめんなさい!!
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初音ちゃんは、生徒会長=お兄ちゃんが席に座るのを確認してから、「もう、チャイム鳴るね〜」と自分の席に戻っていった。
チラリと私は、お兄ちゃんに視線を向ける。
広い肩と、真っ直ぐ伸びた背中。
お兄ちゃんは中学生くらいから、どんどん変わっていった。
見た目も、成績も。
変わるにつれて、そんなお兄ちゃんを<カッコイイ!>と言う女の子たちが、増えていった。
男の子たちは、小さい頃からの付き合いで、お兄ちゃんをよく知ってるから<面倒見が良くて話せる奴>という認識らしい。
とりあえずどちらにも好かれている。
そこに成績もあいまって今年、高校3年生の春、生徒会長に祭り上げられた。
初めの頃は生徒会の仕事にいろいろ振り回されてたみたいだけど、今ではすっかりみんなの生徒会長殿。
……はぁ‥、と溜息をつきながら、こっそりお兄ちゃんを見つめる。
(どんどんお兄ちゃんと私の距離が離れてってる感じ。前はこんなコト、感じもしなかったのにな…)
窓から夏の渇いた風が吹き込んで、私の頬を撫でていく。
(……淋しいな)
きゅっと唇を噛んで、うつむいた。
私がお兄ちゃんを好きなコトは、親友の初音ちゃんも知らない。
初音ちゃんはウチの事情を知ってるし、私の大切な大切な友達。
多分、私がお兄ちゃんを好きって言っても、何の偏見もなく認めて、微笑ってくれると思う。
でも…、言えない。
私は知ってるから。
…初音ちゃんが冗談なんかじゃなく、ホントに、本気で、お兄ちゃん、橘 疾風のコト、好きだって。
いつも初音ちゃんは、みんなに混じってお兄ちゃんのコト、キャアキャア言ってる。
けど、一人になると本当に切なそうに溜息をついて、お兄ちゃんの後ろ姿を視線だけで追いかけている。
同じだもん…。
私と…。
………わかるよ。
だから…言わない。
どうしても…言えない。
(ごめんね、初音ちゃん…)
私は、目尻に薄くにじんだ涙を隠すように、夏の陽射しがまぶしい校庭に視線を移した。
意識の外で、始業のチャイムが鳴り響いていた……。