「あっちゃんが・・・。ヘタレな訳・・・、無いよ!!私が・・・、悪いの。あっちゃんに、その事を話したりしたから・・・。」
「香里は、悪くない・・・。何で、自分を責めんだよ!!前にも、言ったけど・・・。お前は、被害者なんだからな?俺が、不甲斐無いからさ・・・。俺のせいなんだ、俺の・・・。」
「そうじゃ無いよ!そうじゃ無いん・・・、だってば。」
私は、廊下の外にまで、聞こえる位の大きな声で、無意識に、そう叫んでいた―\r
次の瞬間―\r
淳は、凄い量の血を吐いた。
「あっちゃんっっ!!!淳、淳っ・・・!!」
『淳』と呼んだのは、高校生の時以来だった―\r
私の頭の中は、真っ白だった―\r
目の前には、苦しそうに、むせて、吐血する淳―\r
私は、頭の右上に有った、ナースコールのボタンを必死に、何度も押した。
三十秒位経っただろうか―\r
電気のスイッチが有る、頭上のマイクから、若い看護婦の声がした―\r
「浦上さん・・・?どうしました?何か有りましたか?」
「血を・・・、血を吐いたんです!!凄い、量なんです。」
「分かりました。直ぐ、向かいますね。息が出来る様に、頭を横に向けてあげて下さい・・・。」
私は、ゆっくりベットの上の、淳の頭を横に向けると、走って廊下へ出た―\r
見渡せる所には、人影は見えなかった。
茉莉子を探して、廊下を走った。
同じ階に有る、面会に来た家族や友人と話したり、食事が出来る、広い部屋に、茉莉子や、淳の彼女と店の従業員達が、会話もせず、只、黙って座って居た―\r
「あっちゃんが・・・、淳が・・・、突然、血を吐いて・・・。」
「えっ・・・?!淳さんが?」
淳の彼女が、一番に声を荒げ、椅子から立ち上がると、私の元へ駆け寄って来た。
「どうして・・・?!さっきは、落ち着いてたのに・・・。香里さんが、無理に淳さんを喋らせたんでしょ!!」
私は、言葉も出なかった。自分でも、そう思っていたからだった。身体が辛い筈の淳に、興奮させる話をさせたのは、他でも無い、私だったからだった―\r
「・・・。」
「どいてっ!!」
淳の彼女は、私の身体を両手で付き飛ばし、淳の病室へと、凄い早さで、一人、走って行った。
「淳、ヤバいの・・・?」
茉莉子は、ゆっくりと私の前に来て、静かに私にそう聞いた―\r
私は、返す言葉が見当たらず、首を横に振った。
「行こ、淳の病室に・・・。」
「でも・・・。」
「淳が、今、側に居て欲しいのは、香里、あんたなんだよ?分かってるでしょ?あの子の事気にしてたら、後悔する事になるかも知れないよ?」
私は、その言葉に背中を押された―