『本橋先生。
先生にも、子供を持つ親の気持ちはお分かりですよね?!』
ユキエの、ぶしつけな質問には、隣に座る俺の方が驚いた。
そもそもユキエは、こういう場面で自分の意見を積極的に述べるような女ではない。
どちらかと言えば、引っ込み思案なタイプだ。
『ほっほっほ。
そうですね。私にも2人の子供がおりますから。』
本橋は動じる事無く、ユキエが一体何を言いたいのか、
全てを見透かしているかのように、話している間中、ずっと視線を外す事は無かった。
教師生活も長くベテランにもなれば、こういう場面に遭遇する事は多々あるのだろう。
今日、こうして俺達が来る事を分かっていたかのような落ち着きぶりに、
俺は、今思いついた行動を、起こすべきかどうかを考えていた。
『本橋先生。
これから、ホームルームですよね!?
ちょっと、クラスメイトの方達に一言お話させてください。』
そんな優柔不断な俺の考えなど述べる間もなく、
更にユキエがこう付け加えた事は、
さすがに、俺にも予測不可能だったのと同時に驚かされた。
それは、俺もユキエと同じ事を考えていたからだ。