天使のすむ湖31

雪美  2006-08-26投稿
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香里はクリスマス近くなっても、まだ言葉も表情も乏しく、ただデッサンを続けていた。俺と岬が飾ったクリスマスツリーもデッサンしていて、光をうまく表現していた。

クリスマスイブになり、クリスマスケーキやチキンにも香里は興味は示さなかった。俺は正直疲れていた。何日も寝ない日があるかと思うと、丸一日心配なほど眠る日もある。しかも理由は不明なまま、寝不足が続き、期末テストにも影響が出ていた。それでも何とか成績は十五番だった。
思わず岬に
「香里はこのまま何も表現できないままなんだろうか?話せないままなのかな・・・」
愚痴ってしまっていた。
「表現しようとしてるじゃない、言葉は出ないし無表情だけど、絵の中にこのごろ光を良く書くようになった気がするの。」
確かに光を多く取り入れて、最初に書き始めた頃より明るい絵が多くなっていた。
「そうだなー表現しないわけじゃない、なのに何で言葉と表情は戻らないんだろう。」
岬が暖かいココアをカップに入れてくれた。
「このごろあんまり寝てないみたいだから、今夜は私が泊まるね。暖かいもの飲んで、ゆっくり休んだほうがいいわ。」
そう言ってくれたので、久々に自宅に戻った。

俺は部屋に入ると、死んだように眠った。
心地よい夢の中で、香里が出てきて、大好きよ一樹、とつぶやいた。
「俺も大好きだよ、香里・・・」
見上げると、梅の花が咲くきれいな空だった。夢だと気づくと虚しくて、寂しくて、たまらない気持ちになった。



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