お正月にも香里に特には変化は見られず、無表情なままデッサンだけをひたすら続けていた。
正月あけに、催眠療法の柏原先生を尋ねると、
「ずいぶん疲れてるねーしっかり眠れているのかい?」
と聞かれた。
「あまり眠れなくて・・・」
そういうと、
「休めるときには休んだほうが良い、岬さんのこともあるから、」
「岬のこと?」
意外な言葉に聞き返した。
「岬さんも疲れが出てる。」
柏原先生は、軽い催眠剤を出してくれた。
つい俺は、
「なぜ、香里はよくならないのでしょうか?治療の成果はいつ見えるのですか?」
と聞いてしまった。
「良くはなってきてるんだよ、絵がかけるということは、感性が少しずつ取り戻されている証拠だからね。あせらずいこう、どのくらいなんてのは、私にはわからないがね・・・・今はまだなんともいえないな・・・催眠療法は本人の潜在意識に働きかけて、元々の本人のよさを引き出していくものだからね。」
そう説明を受けた。