隆「俺はずっと不思議やった。前も言ったやろ?弟や妹ってのは、大抵兄貴や姉貴を抜かしたいって思うもんや。けど、お前はいつも『達兄、達兄』ってあいつのことをめっちゃ慕って、達也を越えようなんて願望の欠片さえ見えへん。いつもあいつを目標にして…まあ、特殊な関係やからかなって思っとったけど…ほんまはちゃうんやろ?」
慶「…」
隆「ほんまは…密かにあいつを越えたくて越えたくてしゃあなかったんや。ずっと抜かしたかったんやろ?あいつのドラム」
――『兄弟ではないのか』―\r
―『越えちゃったんちゃう?』――
慶「…死んだ人間は越えられへん。」
隆「ああ、そうやな。だから、もうやめろ。あいつと比べんのは。これからどうしようと、お前は一生勝たれへん。でも、死んだあいつにはできひんことが、お前にできる。夢を叶えることや。」
慶「…」
隆「ええか?お前が持ってるその夢を叶えても、“あいつの夢”はもう叶わん。その夢はお前のもんでしかない。だから…」
慶「…」
隆「お前はお前のために夢を叶えろ。…もう一回言うで。“ワイルド・ワン”のドラマーになってほしい。」
慶「…」
隆「…」
慶「……考えとく…」