待ってるの……。
[私]は[貴方]を。悠久(とわ)の眠りを友として。 イバラの棘が吸いあげる。深紅の蜜を糧として。
待ってるの……。
[貴方]に残した硝子の靴は[私]の下(もと)への道先案内。[貴方]に纏う漆黒にも似た深紅の蜜を踏み締めて。
待ってるの……。
黙して隠した[私]の声は[貴方]を求めるこの手のように。深い深い蒼の底。もがいてさ迷う刃と共に。
待ってるの……。
深い深い森の底。罠に嵌められ檻の中。監視の瞳[私]を狙う。深紅い(あかい)果実は心の臓。絞り取られる蜜と為る。けれど[貴方]はまだ来ない………。
待ってるの 待ってるの待ってるの………。
幾千の闇を幾千の[私]は【貴方】を待ち続ける。
たった一人の【貴方】だけを。
待てども待てども【貴方】は来ない。
深紅の蜜は涙と共に止(とど)まる事をしようとしない。
闇から手招く白い手は[私]を連れて何処へ行く……?
待ってるの 待ってるの待っています。
深紅の闇に血塗られようと。
たった一人の【貴方】だけを…………。