――聖二の家
聖「…。」
机に向かい、譜面を眺めている聖二。
「へー楽譜?」
聖「?!」
突然現れた兄に驚いた聖二は、譜面をバラバラと落としてしまった。
聖「賢一!なに勝手に入ってきてんねん!」
賢「お前、まだ音楽やってんの?」
落ちた譜面を拾いあげながら、賢一が尋ねたが、聖二がすぐにその譜面を奪い取った。
聖「勝手に触んなって!」
賢「こんな遊んでて、母さんに何もいわれへんの?」
聖「遊びじゃない。お前と一緒にすんな。…母さんはもう勉強の“べ”も言わへん。俺も…見捨てられたんや。」
賢「ふーん。」
賢一は長い金髪を指先でいじりながら、気のない返事をした。
聖「…もうええやろ!ほらはよ出ていけよ!」
大声で怒鳴りながら、聖二は賢一の背を押して部屋から追い出した。
聖「もう二度と部屋に勝手に入ってくんな!」
そう言い捨てて、音を立ててドアを閉めた。
賢「……俺も、嫌われたもんやな」