淳の傍らに、しゃがみ込んで居る私の背後に、人の気配がした―\r
「香里ちゃん・・・?」
後ろを振り向くと、淳の母親と父親が、立っていた。
「おばさん、おじさん・・・。あっちゃんが・・・、さっき、吐血して・・・。」
私は、涙が止まらなかった。殆んど、言葉になっていなかった―\r
「そう・・・。さっき、先生が、今晩がヤマだって、仰ってたけど・・・、やっぱり・・・、もう・・・、淳は・・・。」
二人も涙を流し、うつ向いていた―\r
「あっちゃんは・・・、きっと元気になります。今は、こんなだけど、さっき・・・、プロポーズしてくれて。これ・・・、私にって、くれたんですよ?」
私は、さっき淳に貰った、婚約指輪を淳の母親と父親に見せた。
「これを・・・、淳が・・・。そうね、そうよね?駄目だなんて決め付けちゃ、いけないわよね?淳は、私とお父さんに香里ちゃんを幸せにする!って言ったんだから・・・。私達が、信じてあげなきゃね。」
淳の母親は、私の手前、そう言い、無理に笑った―\r
私も、微笑みを返した。
淳の意識は、戻らないままだった。
「香里ちゃん・・・?明日、仕事じゃ無いの?こんな時間まで、付き添ってくれてゴメンね・・・。」
「そんな・・・。さっきまで、茉莉子も居たんですけど。仕事なんて、どうにかなります・・・。それよりも、淳に付いていたいんです。」
「でも・・・、ね?身体壊したらいけないし、いつ、意識も戻るか、誰にも解らないし。」
「お願いします。私に付き添わせて下さい・・・。有休もまだ残ってるし、会社には、後で連絡入れますから。」
「分かったわ・・・。じゃあ、私からもお願いします。その代わり・・・、此処、個室だから、香里ちゃんが泊まれる様に、先生に頼んでみるわね。」
「すみません、お願いします・・・。」
淳の母親と父親は、そう言って、病室を出て行った―\r
主治医の先生と話をする為だった。
また、病室で淳と二人っきりになった―\r
私は、ベットの側に、しゃがんで、淳の頭をずっと撫でていた。
息はしているが、淳は、微動だにしなかった。
淳の所持品は、さっき、指輪が入っていた、小さい鞄一つだった。
私は、鞄の中を見た。
小説、鍵の束、仕事に使う手帳、ファイル、ガム、煙草、携帯電話、くし、筆記用具―\r
いつも、目にする物ばかりで、変わった物は、入っていそうに無かった。
鞄を閉じようとした時、目に留まった先に、透明の薄い、クリアファイルが有った。
「これは・・・?」
白いB5サイズの紙に、何か書いて有った。
「中川秀樹さんに関する調査結果」
私は絶句し、息を呑んだ―\r