五章 友達 前
昼休み、屋上に来た鈴奈。
「うぅ・・・なんか寒気がする・・・。」
不安な気持ちのまま、そっとドアを開ける。
屋上の手すりに手をかけて、桜が立っている。
「さ、桜。なんか用?」
恐る恐る声をかける。
「鈴奈、あんた私が楓君好きなの知ってるでしょ?」
少しきつく言ってきた。
「う、うん・・・なんとなくは。」
バシッ!桜が私の顔をたたいた。
「人の男取らないでよ!!」
涙を流しながら、悔しそうに桜が言ってきた。
「な、何言ってるのよ!!桜の男じゃないじゃん!楓は私を選んだんだよ?」
そうだよ・・・楓が私を選んだんだもん!
桜には関係ないよ・・・
「本当に好きでもないのに・・・楓君を惑わせないで!!」
桜は思いっきり私に言った。
もうこのとき、友達なんて関係なかった。
ただ・・・好きって気持ちがあるかないかだけ。
「私だって好きだもん!!」
思いっきり言ってやった。
桜には可哀想だけど・・・本当だし。
「嘘つき・・・私になんか恨みでもあった?酷いよ・・友達なのに・・・。」
桜はいつの間にか泣いていた。
私が泣かせてしまったのだ。
でも・・・
「友達なんて関係ない。私は楓が好き。ただそれだけなの。楓には・・・ずっとそばに居てほしい。それだけ!!」
あ・・・なんて私って小さいんだろうな・・・
友達裏切ってまで・・・一緒にいたい・・・
けど・・・友達じゃなくなるのって・・・辛いことなんだね。
いつの間にか私も泣いてしまった。
桜・・・御免ね。