君と見た空*1の2

玲唯  2010-05-31投稿
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 怒ってなかったような気がする。


 ちょっと安心した。


 辺りを見回すと、土手の下の平地に小さな公園があった。


 ここの公園でよく遊んでたなあ。


 何か懐かしい。


 私は優花を待つために、土手を降りていって公園にあるブランコに座った。


 鎖を掴んでゆっくりブランコを動かしながら空を見上げた。


 そこには澄み渡った青空が広がっていた。


 私は子どもの頃から空が大好きで、晴れの日はよく空を眺めてた。


 画用紙いっぱいに空の絵を沢山描いてた。


 あの絵、どうしたっけ。捨てたかな。


「何してんの?」


 近くからそんな声が聞こえた。


 私がその声の聞こえた方を見ると、男の人の顔が私の真横にあった。


 私はびっくりしてブランコから落ちそうになる。


 いきなり現れたのもあるけど、一番は顔の近さだった。


「そんなに驚かないでよ」


 その人は笑いながら言った。


 何なんだろ、この人。 ナンパじゃないよね。


 見た目は私と同い年くらいで、短い黒髪に紫のパーカーを着ている。


 私は少し不審に思いながら、その男の人を見ていた。


「いいよね」

「え?」


 私は思わず聞き返した。


「空だよ、空」

「ああ、うん。いいよね」

「俺、好きなんだよね」

「私も」

「ほんと?!」


 そう言って私の方を見ると、その人はキラキラした目で私を見た。


 そして私の隣にあるブランコに座った。


 この人も空好きなんだ。


 悪い人じゃなさそう。 そんな気がした。


「ねえ、名前何て言うの?」


 名前なんて聞いてどうするの。


 もう会わないかもしれないのに。


 聞いちゃってからじゃ遅いけど。


「アオト。吉澤空人」

「アオト?」

「うん。空に人って書いて、アオト。アオトって呼んで」


 何か珍しい名前だなあ。


 アオトと同じく名前を説明したいけど、なかなか言葉が出てこない。


 しょうがないから落ちてた木の棒で地面に漢字を書いた。


「莉空かあ」

「うん。私、この漢字好き」

「空って入ってるしね。俺と一緒だ」


 何か嬉しい。


 同じものが好きで、同じ漢字が入ってる人がいるの。





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