手紙

となりのトトりん  2010-06-01投稿
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月の光を頼りにして
貴女に手紙を書いています
届かなくても
書かずには居られないのです

蛍を頼りに夜道を辿るのです。
点と点が繋がる先は
私の来た道と行く先だけど

私はどちらから来たか
わからないので不安です

燈籠を頼りに
石を跳び移るのです

まるで流れに翻弄される
木の葉のように

次へ次へと縺れながらも急ぐのです

銀を頼りにすべてを返すのです
受け入れられれば
白から染まることができるのに

それが私にはとても難行です


だから私は貴女に手紙を書くのです

さよならの手紙は
読みたくはないですか?

さよならの手紙でも
届いたほうが幸せですか?


蛍の燈りは歩いて行くには
少し足りなくて
まるで私の勇気みたいです

後少しで私はどちらかを選択することができるのに
だから私は貴女に手紙を書くのです。

貴女を繋ぐ鎖ではなく
解き放つ鍵になれば
それが私の贖罪になるからです。

燈籠の灯は揺らめいて
まるで私の心です。

飛び石を蹴る足は
少しずつ憂鬱に重くなるでしょう。

だから私は
筆を持っては紙を眺め
筆を置いては瞼を閉じるのです。


銀は煌めいては
白く反射する。

透明は辛辣で
白は苦痛を伴います。

何色ではなく
何色でもない。

ただ無色透明という色なのです。

拒んだ訳ではないけれど
染まれないのです。

だから私はまた筆を持ち
愛と言う文字に訂正線を引いて

さよならと書き直して
貴女に手紙を届けなくてはならないのです

それが私にできる
最後の思いやりなんです

貴女はきっと
私を信じ続けてしまうから…

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