「ガシャーン！！」という凄まじい音が辺りに響きわたった。
ぼくははじめそれが何を意味する音かわからなかった。ガラスの割れるようなその音は人間の骨が砕ける音だと後から知った。
男が飛び込んだ場所は数秒前までぼくがたたずんでいたまさにその場所だった。
ホームには様々な感情が溢れていた。
ある者は絶叫し、またある者は胃の中にあったものをコンクリートの上にぶちまけた。母親は子供の目を手でおおいかくし、近くにいた高校生は興奮し、今はただの飛び散った肉の塊になったものを、必死で携帯のカメラにおさめていた。
ぼくはその飛び散った肉の塊を眺めていた。
頭はひどくぼーっとしていて、目の前の出来事が現実だと理解するのに時間がかかった。
そこに散らばっている今は無数の肉の塊になってしまった物は、ほんの1分前まで人と呼ばれる哺乳類だった。
「やれやれ・・しばらく焼き肉はごめんだな・・」
ぼーっとした頭でぼくはそんなことを考えていた。
「ね。言ったでしょ？」
彼女はそう言って飛び散った肉の塊を見ていた。
彼女の瞳にはほとんど輝きがなくどこか作り物のような印象をうけた。
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