「はい」
「…」
エナンの返事に彼女は目を光らせると、剣をもう一度鞘から抜きはなった。
「え!?」
この行動を予測していなかったのか、エナンは動揺したような表情を浮かべた。
「渡しなさい」
「…は?」
「クリスタルをこちらに渡しなさい、と言っているのです」
「!」
ミーナ、リリア、エナン、ダリル、ザックの五人はその言葉を聞いて一斉に息を呑んだ。
「メディナさん、どういう事ですか?クリスタルはあなたにとって必要の無いものでしょう?」
「使うつもりは無いわ」
メディナは首を横に振った。
「でも、それを所持する権利が私にはあるの」
「権利?」
「そう」
「言っている意味がわかりません。どういう事か詳しく説明していただけませんか?」
リリアは厳しい表情でメディナに尋ねた。
「…」
メディナはそう言われ、五人を値踏みするような目でしばらくの間見つめた。
やがて彼女は小さく息を吐くと、
「私はフール族なの」
と、言った。
「フール?あの、少数民族のですか?」
「ええ。元々クリスタルを所持していたのは私たちフール族なの」
「!?」
「だから私には所持する権利があるのよ!」
彼女は強い口調で言い放った。
「フール…そうか、クリスタルを作り上げた魔術師はフール族だったと何かの書物に書いてあったぞ」
エナンは顎に手を当てて小さく頷いた。
「グリア様は偉大な魔術師だったわ」
メディナは少しだけ表情を和らげた。