流狼−時の彷徨い人−No.54

水無月密  2010-06-02投稿
閲覧数[468] 良い投票[0] 悪い投票[0]

 科学者達は当初、何の特徴もみられぬノアとハクに、これといった興味をしめさなかった。
 だが、短命で終わるミュータントが多く生まれる中で、二つの生命体が安定して成長していくにつれ、彼等の関心は徐々に双子の姉弟へと向き始めた。

 やがて科学者達は、姉弟の身体にそなわった特殊な能力に気付く。
 二人の治癒能力が、異常に高いことに。


 二人の能力の秘密は、その身体に流れる血液にあった。
 遺伝子の干渉により変異した血液には、細胞を活性化させる特殊な働きがそなわっていたのだ。

 科学者達がその事実に気付くと、踏み込んだ研究が始まった。
 そして彼等は、その研究でえた結果に狂喜する。


 正常な細胞の分裂には限界があり、決められた回数に達するとそれ以上の分裂はしないという性質があった。
 細胞は日々死滅していくため、供給がなくなれば身体の細胞数は必然的に減少していく。
 それが老いの仕組みである。

 だが二人の血液には、その分裂の限界すら無効にしてしまう働きがあった。
 つまりはこの姉弟に老いはなく、科学者達はその事実に目の色を変えたのである。


 研究の名のもと、ノアとハクは身体にメスを入れられ続けた。
 そして、全身の血を抜き取られるという生命の危機に直面した時、二人の身体に気の覚醒、オーヴの発動が起きる。

 オーヴが発動したノアとハクの戦闘能力は、ガーディアンと呼ばれるシャンバラの戦士達を圧倒していた。
 その力をもってシャンバラの誤りを一掃すると、ノアとハクの二人は終点の見えない生涯を、祖国の守護神として生きる道をえらんだ。

 それが、今より七百年以上も前の出来事であると、ノアは語った。



i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 水無月密 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ