ぼくはこの美しい女性がこんな目をできることに少なからず衝撃をうけた。
その目から彼女のこれまでの人生の足取りが非凡ではないことだけは容易に汲み取ることができた。
「ありがとう・・・お礼を言わなきゃね。でも何でわかったんだい?」
「さっきも言ったでしょ。勘だって。」
彼女は左の耳に手をやりながら無表情で答えた。
彼女はそれだけ言うと足早にその場を去ろうとした。
「シートもってこい!!シート!!」誰かがそう叫ぶのが聞こえる。
無数の携帯カメラのシャッター音が聞こえる。
彼女はその音で立ち止まり今にも泣き出しそうな顔でその様子を眺めていた。
多くの人間がこの状況を楽しんでいるように見えた。メインは散りばめられた肉片です。さぁ宴のはじまりです。
この中のどれくらいの人間が一人の人間の死を正確にうけとめているのだろうか・・・
シャッターが光る
何かが大きく歪んでいるような気がした。
「待って」
ぼくは悲痛な顔でその場から去ろうとする彼女を呼びとめた。
「何?」
彼女は左の耳に手をやりながらあまり表情のない横顔をこちらに向けた。