実は僕は以前から彼女を知ってた。
この店がオープンしてから2か月、巷で噂になってた。
『凄く綺麗な店員の女がいる』って。
いつの時間帯もいるところをみるとおそらく社員。
どれだけの女か興味があった。
だから僕は1度だけこの店に来たことがある。
彼女は休みでいなかったけど。
「あ、ねぇ。ちょっとドーナツ買ってきて。」
彼女は閉店近くになるとよくそう言って僕におつかいを頼む。
隣のドーナツ屋もうちと同じ時間に閉店だから。
営業中は食事をとる時間すらとれないでいる彼女。
時間が空くのはいつも営業終了後の本社にだす書類を作るとき。
「クリームいっぱいのねー」
彼女はそう言いながら千円札をヒラヒラさせる。
「わかってますよー、コーヒーつきですねー」
僕ももう慣れていた。
そして締めの作業が終わって事務所でいつもの時間。
「んー♪」
そう言って彼女はクリームいっぱいのドーナツにパクつく。
彼女がパソコンのデスクを前に座り、僕は隣で立ってる。
彼女は自然に僕を見上げる形になる。
ぅわ、
マジかわいぃ。
何度その視線にヤられたか。。。
「…こんな時間にそんなの食ってよく太らないですねー」
照れ隠しにそう言うと彼女はぷーっと頬を膨らました。
…そうなんだよ、いくらちゃんと食事できるのがこのくらいの時間しかないっていっても、夜中にこれだけ食べてもちーっとも太らないんだよなこの人。
世の中の女性からすれば羨ましくてしかたないんじゃないか?
そう考える僕の気持ちを知ってなのか、まったく気づいてないのか。
彼女は今夜もブラックのコーヒー片手にドーナツを食べてる。
本当に幸せそうな顔で。
そして僕もそんな彼女を見ているのが嬉しかった。