「リクっていい名前だね。可愛いし」
そう言って、アオトはニカッと笑った。
その笑顔と言葉に、私はなぜかドキドキしてしまっていた。
何してんの、私。
好きな人いるのに他の人にときめくなんて。
そんな時、後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
声の聞こえた方をみると、そこにはユウカがいた。
ユウカは土手の上から私に向かって手を振っている。
私は手を振り返して立ち上がった。
「じゃ私行くね」
「え……うん。分かった」
「また会ったら、話そ」
何でこんなこと言ったんだろ。
私には好きな人いるのに。
そう思いながら、私は土手を駆け上がった。
「リクの隣にいた人、誰?」
「ああ、知らない人。でもいい人だったよ」
「彼氏かと思った!」
「ちょっと止めてよ。私は、結城くん一筋なの!」
「何その台詞。青春だねえ」
そう言ってユウカは、肘で私を突いてくる。
私は身を捩りながらそれを交わして、ユウカの先を歩く。
そして振り返って見えたブランコには、アオトの姿はなかった。