―今夜が峠、でしょう
医者は確かにそう言った
俺の目の前にいる
君は元気に笑ってるのに
「どしたの?…翼」
医者に呼ばれて
話をして
病室に戻ったきり
黙ってしまった俺に
君は笑って問い掛ける
あんまり、笑うなよ
今にも消えてしまいそうな、
そんな顔で笑う君を見れば
俺はもう何も言えなくて
辛いなら辛いって言えよ
死にたくないなら、
死にたくないって言えよ
「翼ってば」
また、無邪気に君は笑う
ねえ、知ってんの?
お前明日死ぬんだよ
もう笑えないんだよ
もう歌えないんだよ
もう二度と会えないんだよ
なんて、言えるわけもなくて
無理して笑ってんの
知ってるから
いくら俺でも分かるから
だけど俺には
どうすることも
出来なくて
だから俺は君に
最期の大事なお願いをする
きっと君は嫌だと言うけど
君じゃなきゃ俺は嫌なんだ
「あのさ、」
やっと口を開いた俺を
首を傾げて覗き込む君は
やっぱりどうにも愛おしい
死ぬなんて、信じられない
だけど死んでしまうなら
また、すぐにでも
君に会いたい
「俺を、殺して下さい」
君のいないこの世でなんて
1秒だって生きたくないんだ