殺『神』事件と人の生

ヤルンヴィドの番犬  2010-06-11投稿
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神が殺された。


被害者は、光の神。
犯『神』は分かっている。
トリックスターと
呼ばれる神だ。

光の神の弟神である
盲目の神を彼が
そそのかし殺させたのだ。

凶器はヤドリギの槍。

ヤドリギだけが、
光の神を殺せる
唯一の存在だったからだ。
本当は、全てのモノは
彼を殺せないはずだった。
過保護な彼の母親が、
その祝福を与えようと
していたからだ。
だが、手違いがあり、
ヤドリギだけは
その祝福から外れた。
そこを利用したのだ。




分からないのは、
その動機だ。

何故、皆に愛されている
光の神を殺したのか。


動機?
光の神は完全無比。
誰も彼を傷つけられず、
また皆が彼を愛していた。
犯『神』は、それを
妬んでいたのではないか。
まして、犯『神』は
忌み嫌われた一族との
混血である。
その劣等感が、犯行に
駆り立てたのではないか。


動機?
他の神々は、光の神が
何にも傷つけられない事を祝い、
彼に色々なモノを
投げ付けて遊んでいた。
調子者である犯『神』の調子が、度を越して
犯行に至ったのではないか。


動機?
犯『神』は、光の神の
父神である創造神と
幾つかの確執があった。
それに対する復讐、
報復で犯行を思い立ったのではないか。




どちらにしても、
犯『神』は光を殺し、
命を軽んじた。
その罰は、償わねばならない。




神ですら、そうなのだ。

神ですら過ちを犯す。

神ですら光を奪う。

神ですら命を殺す。




神の創作物でしかない
人間が、完璧な存在に
など、なりえるはずもない。



分かっている。
分かってはいるが、
それでも完璧を
夢見ずにはいられない。
至高を求め調和を求め、
やがて訪れるであろう
黄昏の刻を乗り越えて、

生きていたいのだ。





生きている理由が、
生きている実感が、
生きている立証が、

欲しいから。



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