02.記憶
翌日の帰り道、いつものように土手を通る。
私はアオトの姿を探したけれど、どこにもアオトの姿はなかった。
何かちょっとがっかり。
私はため息をついて土手を降りて公園に行って、ベンチに座った。
いや、何してんの私。
これじゃまるでアオトを待ってるみたいじゃない。
二股じゃないよ、これは。
二股って使う意味違う?
まあいいや。
アオトは―――昨日会ったばっかりだけど―――友達。
同じものが好きで、同じ漢字が入ってる名前友達。
うん、そう。
「よっ!」
「うわっ!」
背後から肩を叩かれ、私はびっくりして声を上げた。
そして振り返ると、そこにはアオトの姿があった。
アオトはあまりの私の驚きように、同じように驚いたような顔をした。
でもすぐににっこり笑って私の横に座った。
「よかった。また会えた」
「え?」
それってどーゆう意味だろ。
だめだめ、考えちゃだめ。
私には結城くんがいるんだから。
「今日も晴れてるね」
「あ、うん。そーだね。でも明日は曇りだって」
「そっか……」
アオトはそう呟くと、ガッカリしたような顔をした。
言わない方がよかったかな。
それからしばらくの間、沈黙が流れた。
そんな中、沈黙を破ったのはアオトの方だった。
「ねえ」
「ん?」
アオトは何か言うのをためらっているようだった。
私はアオトが話し出すのをじっと待った。
「……俺のこと、覚えてる?」
何を言ってるんだろう、と思った。
「覚えてるって……昨日会ったし」
「そーいう意味じゃなくて。俺たち、昔に会ってない?」
私の覚えている一番古い記憶は、小学4年生から。
そこから記憶を辿ってみたけど、アオトと会った記憶は昨日からしかない。
それより前に会ったのかもしれないけど、全く思い出せなかった。
「ごめん、会ってないと思う」
「だよね。俺の勘違いか」