面白いもので
自分の恐怖体験は
一つ思い出すと
次々に思い出す…
小学五年生の時に
中学二年の兄と
二階で寝てた
父は魚市場勤務で
夜はいない
ある夜中
兄のうめき声で
目が覚めると
薄暗い中で
軍服の男が兄の身体に
刀を刺してるように
見えた
軍服の男は
僕と目が合うと
姿は闇に消えた
僕はそのまま寝たので
起きた時は
記憶はリアルだったが
夢だと思ったが
兄が登校時に
肺に穴が開き
救急車で病院に運ばれる事態がおきた
夕方兄を病院に
見舞ったときに
あの軍服の男の雰囲気を感じた
…次はお前だ…
確かにそう聞こえた
父親に相談するか
迷ったが
能天気な父親に相談するだけ無駄だと思い
相談しなかった
夜父親が出掛けた後
家は一気に
異様な空気に包まれた
父親はやはり
直系寺族だから
父親がいる間は
軍服の男(幽霊)も
出にくいのか…
しかたない
僕は一階の仏壇のある
部屋で線香をたき
お経を唱え
ふとんにくるまるしか
なかった
その日は
誰もいないはずの
二階が騒がしく
僕は生きた心地は
しなかった
朝が来ても
怖くて二階に上がれず
仏壇の前も離れられず
父親の帰りを待った
父親の帰りを待って
事情を話した
父親は神妙に話した
この辺は
防空壕だったからな
僕達は引っ越すしか
なかった
しかし
あの時の感覚は
今だ忘れない
…次はお前だ…