…ああクジラね。
先程出てきたテレビゲームなのだが、主人公は確か白クジラの背中に乗るんだっけ。
しかしよく覚えてるな…確かあのゲームはもう1年ほど遊んでないはずだが。
『ねえ早くクジラ〜』
ええ…?
クジラの声色なんかわかんないよ…。
先程の二人のじいさんの声を真似たせいで、だいぶ喉にダメージを受けていたので、なんとかしてクジラを回避しようと試みる。
「お客様、クジラはいるにはいるんですがね…あれは闇の世界行き専用ですが、よろしいですか?」
『え…?あ!そうか!』
そう。そのゲームの中でクジラの背に乗り主人公が向かったのは、天国ではなく闇の世界だった。子供もゲームの内容を思い出したようだ。
「闇の世界でよろしければご案内いたしますが」
『いやいいですすみません』
…ふぅ助かった。
「それではお客様参りましょうか」
『何に乗っていくの!?』
ええ…?
それは考えてなかった…。
「…じゃあ、バスで」
『はあ!?バス?』
「…天国へ行くのはお客様だけではございません!一人一人運ぶわけにはいかないのでございますよ。お客様は6号車になります。さ、お急ぎください」
『…バスでどうやって空飛ぶのよ…』
は!
「…いやいやお客様。うちのバスは空飛ぶバスですから!なかなか乗れるもんじゃありませんよ〜?」
『乗る乗る〜!』
…単純で助かるわ。
「それでは皆様、全員乗車されましたので、これよりバスは天国へと向かってまいります。私お供させていただく死神太郎でございます」
子供は嬉しそうに拍手する。
『運転手さんの自己紹介は?』
「う、運転手でございますか!?え〜とえ〜と…私の弟子の死神次郎でございます」
…ふう、危ない危ない。
「皆様、眼下に見えますはかの有名な三途の河でございます。川幅600キロ、全長80万キロで…」
子供は死神太郎の一所懸命なガイドを無視し、脈絡もない質問を浴びせてきた。
『死神太郎って歳いくつなの?』
え!?いきなりですか??
「…え〜来月で4137歳になります」
『なんで死神になったの?』
え?
『だって他にもいろいろお仕事あるでしょ?なんで死神のお仕事選んだの?』
…私も知りたいよ。