世の中には様々な職業がある。
医者だったり先生だったり漫画家や料理人…人はみな、大人になったらなりたい職業に就くものだと、挫折を知らない子供は当然のように考えている。
かつて『神様はどうやって神様になったのかな?』などという畏れを知らぬ質問をしてきたような、人と神の区別もつかない子供にとっては自然な疑問なのだろう。
「…私はですね、かつては人間でした」
『え?そうなの?』
「…あれは私が不治の病で苦しんでいた時のこと。枕元に死神が立ったのです」
…どうしてこうも簡単に口から出まかせを思いついてしまうのか。
「その死神は、黒マントに骸骨の、いわゆる普通の死神でした」
『…』
「死神は私の命を奪いに来たが、私にはどうしてもやらねばならぬことがあった。それでどうか私を連れていかないでくれと頼んだのです」
『やらなきゃならないことって?』
「うっ…そこはいいの!すると死神は言いました。【分かった。30年待とう。ただし条件がある。私はそろそろ引退なのだがなにぶん後継者不足でな。30年後におまえが跡を継いで死神になるのだ】」
『…』
「…というわけです。私が普通の恰好なのも、もとは人間だからなのですよ。わかりましたか?」
『…』
われながら上手いまとめ方だ。
『死ぬ人ってどうやって選んでるの?』
は?いきなり別の質問??
「あ、ああ…それはですね、抽選です」
『抽選なの!?』
「ガラガラ回すと玉が出てくるやつ、あれですよあれ」
『へえ…』
「だからまいにち神様と閻魔様が必死でガラガラを何千回も何万回もまわしているのです」
『当たりたくないなそんなの…』
「いやお客様は当たっちゃったんですけど…まあ運ですから仕方ありません。ちなみに若いうちは玉が大きいので出にくいんですが、お年を召してくると玉が小さくなって出やすくなるんですねえ。世界ではたまに140歳だか150歳だかまで生きてる人がいますが」
『そういう人はどうして玉出てこないの?』
「多分箱の中でどっかひっかかってるんでしょうねえ」
『いいなあ…』
…こんな嘘ついて神様怒るかな?
「さあ、そろそろ天国につきますよ。揺れますからシートベルトをしっかりしめて下さい」
『やったあ!』
さあ、天国に到着だ。