飛行機が着陸するかのような音を口で真似しながら、天国をどんな場所にするのか頭をフル回転させて考える。
「さあ着きました!ここが天国です!足元に気をつけておりてくださいね」
『…』
ん?どうした?
『(…ねえねえ、天国ってどんなとこなの?)』
いきなりひそひそ声になる。
おそらく芝居?の裏で話しているつもりなのだろう。
「どんなところだと思います?」
逆に聞いてみた。
『うんとねえ、白いふわふわの雲の上でねえ、ガラスのお城がいくつもあってねえ』
「うん、確かにそうですね。でもそれは神の住む都です」
『え?そうなの?』
確かにそれは私も抱く天国のイメージのひとつだが、全てがそれでは少しつまらない。
「天国は、皆さんが住んでいた世界とほとんど同じです」
『ええ〜!つまんな〜い』
「いやいやだからいいんじゃないですか。学校へ行けばお友達もいるし、休みの日には遊園地に行ったり…どこまでも雲だけが広がっていて他には何もないんじゃ、つまらないでしょう?」
『え〜そうかな〜』
そう。
考えた末、天国はこの世と何ら変わらない設定にすることにした。
一面の雲やお花畑も悪くはないが、やはり自分としてはこのなじんだ世界と変わらない風景であってほしい…そう思ったのだ。もちろん本当のこの世みたいに飢饉やら環境汚染やらがあっては困るが。
「…ただし、違うのは、どろぼうさんがいないということですね。それに病気もないし、貧乏な人もいないし、とても平和です。それに…」
『それに?』
「好きな場所に好きなお家を建てて住むことができますよ」
『やっほ〜!!!』
その掛け声は何だ。
『じゃあねえじゃあねえ、お屋根は赤くて壁が白くておおっきなお家ね!あとお庭は思いっきり広くして!でねでね、犬を15匹と〜猫を12匹と〜ハムスターを12匹と〜カメを3匹飼うから!』
…やっぱりね。
子供は昔から一戸建てに住んで動物を飼うのが夢だ。【これでお家買って!】と、お年玉の1万円札を差し出してきたのは保育園の時だったか…。
「…そんなにたくさんの動物、お世話が大変ですよ?」
『大丈夫!死神太郎が面倒みるから』
「は?」
『ねえ死神太郎、私の執事になってよ!』
執事!?
正気か!?