夕闇が広がる廊下で、スレイとマーチンが立って話しをしていた。
ロウソクの火が揺れて、彼らの影を揺らす。
「足りないだと?」
「は…奪取したクリスタルの数が合わないようなのです」
「元々そこにあった数が一つだけではないのか?」
スレイは顔を歪めて首を傾げた。
「いえ、エリック王はまだ保養所の数があまりない時期にクリスタルをあそこに集めておいたのです。そこから少しずつ保養所に移している段階ですので、一つだけというのはありえません」
マーチンは首を横に振った。
「ならばその他のクリスタルはどこへ消えたのだ?」
「…恐らく、部下の中の誰かが…」
「馬鹿なっ!」
スレイは目を大きく見開いて、叫んだ。
マーチンは慌てて唇に人差し指を置いて、
「お静かに」
と、注意した。
「一体、誰が…」
「これはあくまで私の予想ですが…」
「?」
「コッペル様ではないかと…」
「コッペルか…」
スレイは苦い顔をして、唇を噛んだ。
「あくまで私の予想です。拙速な判断は慎んで下さい」
「わかっている。だが、クリスタルが部下の手に渡っているというのは由々しき事態だ。どうにかできないものか?」
「残念ですが、今はどうにも出来ない状態です」
マーチンは小さく息を吐きながら、俯いた。