「ちょっとユウカ、びっくりさせないでよ!」
振り向かなくても、声だけでユウカだということが分かった。
ユウカは笑いながら、ごめんごめんと謝る。
「あ、もしかして昨日の人?」
ユウカはアオトの方を見て言った。
私が頷くと、ユウカはアオトの隣に座る。
「初めまして。リクの友達のユウカです!」
「俺はアオト。よろしく」
いつもより、ユウカの声が高い気がする。
アオトは柔らかい笑みを浮かべながら、自己紹介をした。
「アオトって珍しい名前だね! あ、何歳? 高校生? 家、この近くなの?」
ユウカの質問はまだまだ出てくる。
その質問攻めに、アオトは完璧に困惑している。
私、いない方がいいかな。
でも、アオト困ってるし……。
ああ、もう!
「ほら、ユウカ。帰ろ」
「えー! もっと話したい!」
ユウカは子どものように駄々をこねる。
でも私は、そんなのお構いなしでユウカの腕を掴んで無理やり立たせた。
「じゃあね」
「ちょっと、りくってば! あ、またね、アオトくん!」
ユウカが手を振ると、アオトは小さく手を振り返していた。
アオトの姿が見えないくらいまで歩いたところで、私はユウカの腕を放した。
「アオトくん、かっこいいなあ。彼女いるのかな」
「さあ、聞いたことないや」
完璧に狙ってる。
別に私には関係ないけど。
私には結城くんがいるんだから。
アオトはただの友達。
「リク、今度聞いといてよー」
「何で私が?! 自分で聞きなよ」
「だって、それ聞いたら気があることバレるじゃん」
大丈夫だよ。
それはもう、バレてるから。
あんな質問攻めを食らって、気づかない人はいないと思う。
「お願い!」
そう言って、ユウカは顔の前で手を合わす。
別にいいか。聞くくらい。
聞いてあげる代わりに、後で何か奢ってもらおう。
そう思って、私は承諾の返事をした。