欲望という名のゲーム?5

矢口 沙緒  2010-06-22投稿
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「とにかく、ここにいてもしょうがない。
中に入って弁護士の鹿島とかいう男に事情を聞いてみよう」
明彦は決心したようにそう言うと、正面のドアに近付いていった。
そして、そのドアの前まで来て立ち止まった。
「おいおい、こりゃなんの冗談だい」
呆れたような声を上げる。
それを聞いて、他の四人もドアのそばまで来た。
それまで気が付かなかったが、ドアに異様な物が下がっていた。
大きな分厚い木で出来た観音開きのニ枚ドアで、その両方のドアにそれは下がっていた。
大きさはちょうど人間の顔と同じ位で、鉄かなにかは分からないが黒い金属で出来ていて、厚みもかなりある。
彫金というのだろうか、とてもリアルな作りの笑った人間の顔なのである。
それが二つ、目の高さより少し上に、ドアのどちらの板にも下がっている。
「雅則兄さん…」
孝子がつぶやくように言った。
「確かにこれは兄貴の顔だが、いったいなんなんだこれは?」
明彦が深雪に聞いた。「あたしだって知らないわよ。
こんな不気味な物」
「何かのおまじないでしょうか?」
喜久雄が皆に尋ねる。
しかし、まともに答えられる者はいない。
皆一様に首を捻っている。
友子が恐々と指で押してみた。
「あら、これ意外と軽いわよ。
中は空洞なのね」
その時ドアのノブがガチャリと音をたてて回ったので、友子はビックリして後ずさった。
ギ、ギギーィ…
物々しい音をたてて、ドアがゆっくりと開いた。
中から大柄な男が顔を出した。
身長は百九十を少し越えているかもしれない。
しかも上背だけでなく、肩幅や胴回りもガッチリしていて、どちらかというと日本人離れした体格だ。
年齢は四十よりは上だが、五十には届いていないというところか。
髪をピッタリと撫で付けていて、銀縁の眼鏡を掛けている。
一見してかなりの紳士に見えるのは、その物静かで理知的な顔立ちと同時に、仕立てのよい高級スーツをさりげなく着こなしているそのセンスも一役かっている。
この男、弁護士の鹿島が五人を屋敷に招待したのだった。
「皆様、お着きでしたか」
鹿島は低いそして威厳を含んだ話し方をする男だった。
「遠いところをお疲れだったでしょう。
荷物は後で運ばせますから、どうぞ中へ」
そう言ってドアを大きく開けた。

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